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【弁護士監修】宅建士が解説するゴミ屋敷は強制退去になるか!?

2023/07/07

一昨年あるお客様から管理会社にゴミ屋敷にしてることがバレてしまい、強制退去を言渡されてしまいどうすればいいかと相談を受けたことがありました。

結果的にはすぐに片付けることを約束し強制退去は免れたのですが、このお客様はどうしてゴミ屋敷であることがバレてしまったのかと、極めてプライベートな室内をゴミ屋敷状態にしたことで強制退去にまで言われなければいけないのか少し不服そうでした。

この事例を元にゴミ屋敷にすると強制退去や更新拒否はあり得るのか、またその法律根拠を示していきたいと思います。

代表取締役であり宅地建物取引士である佐々木久史が解説いたします。また本文のリーガルチェックは栃木柳沢法律事務所弁護士栃木義宏先生が監修いたしました。

そもそも賃貸住宅は誰の物?

賃貸住宅のゴミ屋敷を考える際にはそもそも賃貸住宅は誰の物という原則的なことを考える必要があります。言うまでもなく賃貸住宅は毎月賃料を払って住む部屋です、賃料を払うということはその建物や部屋は自分の持ち物ではないということです。

人の所有物ですから当然大切に使うというのが基本的な考え方で、お金を払っているから好き放題使えるという意味ではありません。 

賃貸住宅に限らず借り物に対して借り手は「善管注意義務」というものがあります、善良な管理者という意味ですが簡単に言えば借り物なんだから自分の物より大切に注意して扱え!というものです。

ですから上記の強制退去を勧告された人はこの善管注意義務違反に該当するので退去せよ!となったと考えられます。

ゴミ屋敷がバレて退去勧告!
 

ゴミ屋敷にまつわる法律知識

 部屋を散らかしたりゴミを溜めたりするのは『犯罪行為』ですか?
ゴミ部屋(屋敷)にすると訴えられたりするって本当ですか?

ときどきこのような質問をされることがあります。
かなり以前にゴミ部屋にしてしまい、その上水漏れを起こしてしまった女の子は逮捕される!と泣きながら電話してきたこともありました。

ゴミ屋敷にしてしまうこの自体は刑法にはあたらないので逮捕されるとか、そのことによって『前科〇〇』というようなことはありません。

刑法に触れることはありませんが、前段のように借りてる物なんだから大切に扱えというルールは存在し、また賃貸住宅には様々な法律がついて回ります、ゴミ屋敷に関しては警報には抵触しないけど、その他の法律で見た場合は完全にアウト!と考えることができるものがあります。

冒頭の強制退去の問題を受け、どの法律のどの部分がゴミ屋敷はアウトと判断されたのかを調べて考えてみました、そこで行きついたのが2020年の民法改正で明文化された民法621条です。次章ではこの民法621条とは何か、そしてゴミ屋敷とどう関係するのかを解説していきます。

改正民法621条の主な内容

民法621条は賃貸住宅を退去する際のもので借りていた人が部屋を出る時にどこまで元通りにしなければいけないかを定義づけた法律で、改正前までは若干アバウトだったものを改正し明文化したもので条文は次の通りです。『賃借人は、原則、賃貸物の原状回復義務を負う』『ただし、通常損耗・賃借人の帰責性のない損傷については負わない』

つまり下記2点がポイントです。
1.賃貸住宅を出る時は入った時の状態に戻しなさいよ、それは羅りていた人の義務ですよ。
2.元通りにしなければいけないけど通常使用や経年劣化(住んでた人の責任ではない)で破損したり汚れた物は仕方ないからそのままでいいよ。

賃貸を退去する際にあまりにもトラブルが多いので、このようにはっきりと借手側が負う責任と大家さん側が負う物をはっきり色分けしたのがこの民法621条で、改正に至った背景は平成17年の最高裁判決が元になっています、次章では判例を示しながら解説を進めます。


賃貸住宅は借物

 

原状回復義務を明文化するに至った判例

(最高裁 平成171216日判決から抜粋)
賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約 の本質上当然に予定されているものであり、 それゆえ、建物の賃貸借においては、借主が 社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の 中に含ませてその支払を受けることにより行われている。 

この判例は賃借人が退去をする際に普通に使用していたために起きたような汚れや傷などの補修に対し敷金から引いたり原状回復費の高額請求は不当だと訴えたことにより出た判決です。

賃貸物件という性質上部屋の損耗(傷や汚れ)は当然起こることが予定されいる、部屋を貸す側はそのことを見込んで家賃を設定し受け取っているのだから退去時に賃借人に多大な負担を押し付けてはいけない、という判例です。

賃貸の退去トラブルはひどい場合だと内装すべてを新品にするようなグレードアップが平然と行われていることもあり、それらのトラブルを未然に防ぐために改正されたのです。

ではこの法律のどこがゴミ屋敷と関係し、強制退去や更新拒否の可能性をはらんでいるのかが気になるところです、次章では民法621条とゴミ屋敷について解説します。

 ゴミ屋敷は部屋の通常使用とは言えない理由

判例の中にゴミ屋敷と関係あると思われるキーワードがあります、「社会通念上通常の使用」という部分です。
いわゆるゴミ部屋(屋敷)や汚部屋はこの社会通念上通常の使用にあたるかどうかです、それこそ判例がありませんので一概には言えないのですが、一般的な解釈でもゴミ屋敷は逸したものと考えれます。

この条文と判例はあくまでも敷金精算や退去時のトラブルから派生したものではありますが、部屋の使用について一定のルールが明文化されたとも考えることができます。

つまりゴミ部屋や汚部屋は社会通念上通常の使用を超える使用となり、場合によっては貸主側から契約解除や損害賠償ということも考えられなくもありません。
何度も言いますがこの条文は賃貸住宅の退去時のことが明文化されただけですが社会通念上通常の使用という文言から見ても居住中のことについても適用できると考えます。

居住中は部屋をどう使おうと勝手だ、ドアの内側はプライベートなスペースなんだから干渉させないというような理論も一部まかり通っていた部分がありますが(立入調査など)この条文の拡大解釈でそれらの行為も通らなくなる可能性もあります。

ゴミ屋敷は借主の一方的な過失

賃貸住宅退去時にゴミ部屋であったことを理由に多大な修繕費の請求

原状回復の責任や範囲が明文化されたということは裏を返せば通常使用と考えられない使い方をしていた居住者は莫大な退去費用を請求される可能性が高まったと言えます。

今までもゴミ部屋であったことが大家さんに知られていて退去時に退去費用で大きく揉めたという話はたくさんありますが、明文化されていなかったのでアバウトに処理されていたのが現状ですが、今後ははっきりと理論立てて請求される可能性が高いと考えます。
 

強制退去や更新拒否を回避させる方法

では、ひとたびゴミ部屋(屋敷)汚部屋としてしまったらサンドバッグ状態で言われるまま応じなければいけないのかと言えばそうではありません。

条文中にある「通常損耗・賃借人の帰責性のない損傷については負わない」というのがポイントです。
一時的にゴミを溜めたり汚したりはしたけれど、通常に使用していたレベルまで回復させれば問題ないという考え方です。

かつてこんな例がありました、大家さんはゴミを長年溜めている賃借人がいることを知っていました、その賃借人(すなわち弊社への依頼者)が退去の際にゴミを片付け、水回りや部屋全体をクリーニングしそれなりの状態で返還したにも関わらず、大家さんは居住中の行為により建物自体に損傷が出たとして莫大な現状回復費を請求したのです。

まだ上記条文が明文化される前だったので、部屋で孤独死や自殺による損害賠償請求
の事例を示し私たちが中に入って交渉し住んでいた期間なりの部屋として返還されたと納得してもらったことがありました。

ゴミ屋敷の原状回復費用500万円!

部屋の原状回復のアドバイスします

 

ゴミ屋敷がバレてしまったら

2020年の秋ごろから点検と称して怪しい部屋を立入りチェックするという動きが一部の管理会社であったことがあります、ある不動産ブログに書かれていたことですので間違いのない情報だと考えますが、どうも上記の法改正を受けての動きだったのではと思います。

ゴミ屋敷を片付けるという目的や片付けを思い立った経緯の中では引越や点検が理由が多いのは周知のことと思いますがゴミ屋敷の発覚原因が点検からというのも多いのです。

点検以外にもゴミ屋敷がバレてしまう例はいくつもあるのですが、点検以外にも近隣からの苦情(虫やにおい)もそれなりにあり、戸建てと違ってマンションやアパートの場合は室内で進行するので近隣から苦情が来るレベルまでいくと相当進行してる場合が多いのも事実です。

もしゴミ屋敷がバレてしまったら対処法はひとつしかありません、期限を決めて片付け計画を伝える、いつまでに片付けてキレイにすることを伝え、そして謝り倒す!これが一番の解決の近道です。

ゴミ屋敷がバレたらすぐに謝って掃除しろ!
 

素早く対応できるゴミ屋敷片付け業者

もしゴミ屋敷がバレて早急に片付けなければいけない場合はまごのてにご相談ください。東京近辺であれば最短即日の作業が可能です。
またゴミ屋敷であったことで退去勧告や更新拒否でお困りの時もご相談ください、まごのてには不動産トラブルに強いメンバーが揃っていますので適切なアドバイスをいたします。

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